すみ鬼にげた
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すみ鬼にげた (福音館創作童話シリーズ) 著者:岩城範枝 |
これは傑作でした。
妻と息子が図書館で借りてきた絵本を読んでいたのを、台所で夕飯の支度をしながらなんとなく聞いていたのですが、手元の作業をしながら時折耳に入ってくる言葉が気になって仕方が無い。ひと通り食材を下ごしらえして土鍋にぶちこみ、火にかけた次の瞬間ためらわずにこの絵本を手に取っていました。で、台所で立ったまま鍋の湯気を時折眺めながら一気に読了。
舞台は江戸時代中期?の奈良・唐招提寺。徳川幕府の寄進により修理されることになった金堂にやってきた、亡き父の跡を継ごうと宮大工をめざす少年ヤス。彼と「すみ鬼」の出会いの一晩を描いた作品。
通常、四天王に踏みつけにされている邪鬼。ところが唐招提寺の邪鬼はなぜか屋根の四隅に押しつぶされるように屋根を支えている邪鬼。これは実際にそうらしく、その邪鬼が金堂の平成大修理に際して東京で展示されたらしいのです。これを見た著者が、4体のうち唯一江戸時代に作られた1体だけの表情が違うことにイメージを膨らまし、実際に奈良まで訪ね、出来上がったのがこの作品ということです(あとがき参照)。
いま金堂の平成大修理を行っている唐招提寺の公式サイトをみると「唐招提寺は唐の高僧・鑑真大和上により天平宝字3年(759)に創建され、井上靖氏の小説「天平の甍」の呼び名で親しまれている「金堂」(国宝)は、平安・鎌倉・江戸・明治時代と過去4回の大修理が行われてきました」とありました。ですからこの物語は過去4回のうち、江戸の大修理での出来事とされているようです。
鑑真和上により創建された唐招提寺、当時の唐(中国)には四隅に邪鬼を配す建て方が流行していたようです。これも輸入されどれくらい広まったかは知りませんが、その様式で建てられた。現存しているのは唐招提寺と法隆寺の五重塔だけといいます。当の中国でも残されていない。そう思えばこの邪鬼たちは実に孤独なものだと可哀想にもなります。
邪鬼に対して「可哀想」もないものですが、そう思わさせる「人間臭さ」というか、どちらかといえば「任侠臭さ」といいますか、そういう律儀さをもっている唐生まれの「すみ鬼」。鑑真和上によって封印され、900年もの間屋根を支え続けてもヤスとの出会いによって渡海の目的を果たし、一人異なる表情でいまもたたずんでいるそうな。1体だけ表情が異なること、それが江戸期に作られたことにイメージングされ、そんなストーリーが浮かんだ作者に大いに敬意を表したい。江戸の元禄時代に修理が行われているというので、それくらいの遊び心をもって修理されていてもおかしくは無いと感じました。
さて当の息子(6歳、もうすぐ小学校)ですが、日本の鬼達がでてくる場面になるとやはり怖いらしく、そのページが近づくと「こわいよ♪ こわいよ♪」と楽しみっぽい声で待ちます。でも「すみ鬼」にはあまり怖くないようです。一時期「竜」ブームだった息子ですが、節分を前にして息子も鬼ブームになっていて、一緒に借りてきた物語では「鬼は内~、福も内~」とやって鬼に感謝される子どもの話を大喜び。「鬼は内だってー」と何度も読ませます。なんとなく、時に悪さするけどオッチョコチョイで人懐っこい憎めない存在。そんな印象を「すみ鬼」にも抱いているような。うーん、微妙にジャイアンへの印象に近似値かも(笑)
鬼が怖いけど、ちょっと乗り越えたい…。そんな子におすすめの一冊です。
ちなみにこの作者、こんな(↓)鬼がテーマの絵本も書かれているようです。今度読んでみます。
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鬼の首引き (日本傑作絵本シリーズ) 著者:岩城 範枝 |
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